働き方の価値観が大きく動いた昨今。
少し前までは、「石の上にも三年」ということわざにあやかり、まずは3年働くというのが当たり前という価値観がありました。
しかしその考え方が世間全体で変わってきており、極端な話、数ヵ月での退職もめずらしくはなくなっています。
終身雇用は崩壊し、転職が当たり前になった時代、自分に合わないと思ったら、すぐに退職するというのも賢い選択なのかもしれません。
ただ、退職が当たり前になったからといって、退職するまでにかかる必要な手続きが簡略化されたわけではありません。
退職時の手続きって何すればいいのか、周りに相談しにくい疑問であり、いつまでに何をして、公的な手続きは何が必要なのか、ご存じない方も多いのではないでしょうか。
そこで今回の記事では、退職に必要な手続きについて順番に考えていきます。
チェックリストも用意しておりますので、ぜひ最後までご一読ください。
退職時の大まかな流れ
まずは退職時の大まかな流れを確認しましょう。
退職日から逆算すると以下のような流れになるのが一般的と言えます。
- 2、3ヵ月前 : 退職の意思を伝え、退職日を調整する
- 1ヵ月 : 業務の引き継ぎ、退職届の提出、受理
- 2~1週間前 : 取引先への挨拶回り
- 退職日 : 社内への挨拶、貸与品返品、必要書類の受け取り
自分の中で退職の意思が固まったら、まずしなければならないのは、上司への退職意思表示です。
上司へ退職の意思を伝えることが、退職に関する一連の流れのスタートになります。
その際、引き止めにあうこともあるでしょう。
はっきりと自身の強い意思を伝えられるかがポイントとなり、そこが最初の難関となります。
ただ最近では、「またか」という感じで、すんなり受け入れてもらえることもあります。
自身の考えをしっかり伝えられるようにしておけば、大抵の場合はそこまで警戒する必要もありません。
上司へ退職の意思を伝えたら、次は退職日を調整し、業務引き継ぎを進めていきます。
また、退職届を提出し、会社側は退職証明書などの関係書類の準備を進めていくことになります。
社内規則にもよりますが、円満退職のためには2ヶ月前までに申し出るとスムーズに事が進みます。
退職に必要な手続き
退職に必要な手続きとしてどのようなものがあるのかを考えていきます。
退職に必要な手続きは退職する社員だけでなく、当然ですが会社側にもたくさんあります。
ですので、余裕をもって進めることを心がけておくのが基本となります。
そのうち、退職する側(退職者)で必要な手続きは主に以下となります。
- 退職の手続き・退職届の提出
- 会社の所有物・貸与物の返却
- 有給消化をする場合は申請など
どんなことをするのか、ひとつずつ見ていきましょう。
退職の手続き・退職届の提出
退職の手続きは、前述のとおり、上司へ退職の意思を伝えるところからがスタートです。
退職日については、上司と話し合いながら調整していきます。
繁忙期だと、なかなか折り合いがつかないこともありますが、会社側の都合ばかり受け入れていたら一向に進まなくなりますので、ご自身の都合を可能な限り優先させましょう。
お互い、支障のない退職日が決まったら、退職届を作成し、上司へ提出します。
会社はその退職届を受理し、退職のための各種手続きを進めていくことになります。
退職届提出後は、引き継ぎ資料の作成からはじめ、後任者へ自身の業務の引き継ぎを行っていきます。
会社の所有物・貸与物の返却
退職日(有給消化を行う場合は最終出社日)には、会社の所有物や貸与されている備品などを返却します。
主な貸与物として以下のようなものがあります。
- 健康保険被保険者証
- 社員証
- 制服や作業着
- 名刺
- パソコン
- スマートフォン
- WiFiルーター
- 通勤用の定期券
- 企画書や資料など会社で作成した成果物
- その他社費で購入した備品
健康保険被保険者証については、有給消化の期間が長くなるようであれば、その間、病気やケガをしたときに困ってしまうので、最終出社日ではなく退職日に返却した方が無難です。
制服や作業着を支給されている場合は、クリーニングして返却するのがマナーです。
企画書や資料など会社で業務として作成した成果物は原則会社のものとなる点にも注意してください。
失念するなど誤って業務上の機密ファイルなどを持ち帰ってしまうと、大きなトラブルに発展しかねませんので、適切に対処してください。
何も借りていないようで意外と会社から支給されているものは多いです。
当然ですが、そうしたものはすべて返却しなければなりません。
もし、返却を怠ると最悪、横領罪として罪に問われてしまうので、会社の所有物は忘れず全て返却してください。
有給消化をする場合は申請など
有給が残っているなら、できる限り、すべて使い切ってから退職しましょう。
有給休暇は労働基準法第39条により定められている労働者の権利です。
有給消化する場合は、基本的に事前に申請しておく必要がありますので、忘れずに申請する必要があります。
有給を使い切るのは会社に迷惑をかけるからと遠慮する方もいらっしゃいますが、退職後に向けての準備もあるはずですので、自身のことを優先してください。
退職の際に会社からもらうもの
退職の際、会社から何をもらわないといけないのでしょうか。
退職する会社任せにするのではなく、ご自身でもしっかり把握しておくことはとても大事なことですので、ここでしっかりおさえておきましょう。
退職の際に会社からもらうものは、まず以下の3つです。
- 年金手帳
- 源泉徴収表
- 離職票
年金手帳
年金手帳は、厚生年金の加入者であることを証明する書類です。
多くのケースで会社が保管してますので、会社から返却してもらうことになります。
ただし、会社ではなく、ご自身で保管している場合は、対象外です。
万が一紛失してしまった場合は、社会保険事務所で再発行できます。
源泉徴収票
源泉徴収票は、所得税の年末調整に使うための書類です。
退職した年の年末調整までに、転職先の会社へ提出しなければなりません。
もしくは、その年のうちに転職しなかった場合は、所得税の確定申告時に必要となります。
発行に1ヵ月程度かかるため、通常は、退職後に郵送で受け取ることになります。
離職票
離職票は、雇用保険の失業給付に必要な書類であり、転職先が退職時点で決まっているのであれば必要ありません。
ただし、そうでない場合は失業給付の手続きに必要ですので、こちらも会社からもらう必要があります。
離職票は、発行までの手続きに時間がかかるので、退職日にもらうのではなく、退職後に、郵送してもらう流れになります。10日前後かかるのが一般的です。
その他、「雇用保険被保険者証」についても、会社が保管している場合もあるため、もしそうであれば雇用保険被保険者証も会社からもらう必要があります。
雇用保険の被保険者であることを証明する大事な書類です。
転職先が決まっているのならその会社に提出するものであり、転職先が決まっていない場合は雇用保険の失業給付に必要となるものとなります。
雇用保険被保険者証を紛失した場合はハローワークで再発行できます。
もうひとつ、転職先の会社によっては「退職証明書」が必要となることもあります。
退職証明書は、その会社に在籍し、すでに会社を退職していることを証明する書類です。
退職者が退職証明書を請求した場合、労働基準法第22条1項により、会社側は必ず発行しなければなりません。
国民健康保険へ切り替える場合は、「健康保険被保険者証資格喪失証明書」も必要です。
まとめると、会社に預けていたり、退職後の状況によってもらわないといけないものは以下になります。
- 雇用保険被保険者証
- 退職証明書
- 健康保険被保険者証資格喪失証明書
基本的にどれも重要なものですので、退職時に何を受け取らないといけないのか、事前におさえておいてください。
なお、最近は少ないかもしれませんが、会社が厚生年金基金に加入していた場合のみ「厚生年金基金加入員証」も退職時に受け取ってください。
少し紛らわしくなってしまいましたが、本記事最後の退職チェックリストに改めてまとめていますので、そちらもご確認ください。
退職の手続きをうまく進めるポイント
退職までには何かとやることがあり、苦労も多いところです。
ですので、退職をスタートする前に、退職の準備をしておくと、とてもスムーズに進めていけます。
ということで、次は退職の手続きをうまく進めるポイントについて考えていきます。
ポイントは主に以下の3つです。
- すでに退職した人に自社の退職について聞いておく
- 前もって退職の準備をしておく
- 退職チェックリストを作っておく
すでに退職した人に自社の退職について聞いておく
会社によって退職の流れや手続きの対応速度は違ってきます。
そのため、すでに退職した人から、どのあたりを注意しなければいけないのか、どこで困ったのか、自社の退職事情について聞けるようであれば聞いておくことをおすすめします。
源泉徴収表など、退職してからしばらくしてからでしか受け取れない書類もあります。
後日郵送されてくるのが通常なのですが、もし届かないようであれば担当者が忘れている可能性もあります。
そのため、会社の人との連絡手段も残しておいてください。
前もって退職の準備をしておく
退職の際に最ももめる可能性があるのは後任者への業務引き継ぎです。
通常業務の中での引き継ぎになるため、スムーズに引き継ぎできないこともあります。
何より、自分自身も退職後のことで準備が忙しいはずです。
引き継ぎ用に手順書やマニュアルを作成しておくなど、前もって退職の準備をしておくことも大切です。
退職チェックリストを作っておく
退職までに行わなければならないことのチェックリストを作成しておくことも重要です。
以下に退職関わる一般的なチェックリストを用意しましたので、ご参考いただければと思います。
退職までに行うべきチェックリスト
- 退職したい旨を伝え、退職日を決める
- 後任者へ引き継ぎを行う
- 取引先への挨拶を行う
退職日までに少なくとも上記は行う必要があります。
退職までに行う必要な手続きチェックリスト
- 退職届の提出
- 会社の所有物・貸与物の返却
- 有給消化をする場合は申請
「退職願」と「退職届」を混同してしまわれる方も多いですが、退職願はあくまで会社に対して「退職したい」と願い出るための書類であり、本当に必要なのは「退職届」になります。
退職届は退職日が確定した後に会社へ提出することになります。
退職願の段階であれば提出後、撤回もできますが、退職届を出し、会社側が手続きを開始すると、基本的に撤回はできません。
退職の際に会社へ返却するものチェックリスト
- 健康保険被保険者証
- 社員証
- 制服や作業着
- 名刺
- パソコン
- スマートフォン
- WiFiルーター
- 通勤用の定期券
- 企画書や資料など会社で作成した成果物
- その他社費で購入した備品
会社から貸与されているものは、もれなく速やかに返却しましょう。
退職手続きで会社から受け取るものチェックリスト
- 年金手帳
- 源泉徴収票
- 離職票
- 雇用保険被保険者証
- 退職証明書
- 健康保険被保険者証資格喪失証明書
- 厚生年金基金加入員証※
※厚生年金基金加入員証は、会社が厚生年金基金に加入している場合のみ対象となります。
上記のうち、退職後に送付されてくるものは以下になります。
- 源泉徴収票
- 離職票
源泉徴収票は退職日から1ヵ月以内、離職票は2週間以内に送られてくるのが目安になります。
それ以上経っても届かない場合は、担当者が忘れている可能性があるので、届いていないことを会社に伝える必要があります。
スムーズに退職をするなら必要な手続きを知っておこう!
ここまで見てきたように退職までにやるべきことは多いです。
退職の意思を伝えてからは、目まぐるしい日々が続くことになるため、何をやらないといけないとのか事前におさえておくことはとても大事なことです。
最近は、本当に転職する人が増えています。
それこそ会社に就職したばかりの新社会人が、入社してすぐに転職サイトに登録している、そんな光景もめずらしくありません。
それだけ誰しもが将来の不安を感じていて、不安を受け入れるしかない状況に陥っていることを示しているように感じます。
退職を前提に働く、もう今はそういう時代ですので、退職するための流れを知っておくことは決して無駄ではありません。
スムーズに退職をするなら必要な手続きを知っておきましょう。
退職後のお仕事が決まっていない方、コンサル転職をご検討中の方はMyVisionもご参考ください。
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